ランとウォークを交互にする理由:膝や関節への負担をどう考えるか
「走ると膝が悪くなる」。ランニングについて、これほど長く残っているイメージも珍しいでしょう。1回のランで何千回も着地するのだから、衝撃が積み重なって軟骨がすり減るはず——そう考えると、確かにもっともらしく聞こえます。
ところが、研究が示すのはもう少し穏やかな現実です。適度に走る市民ランナーは、運動習慣のない人より関節トラブルが多いとは限らず、研究によっては少ない傾向も報告されています。大切なのは「走るか、走らないか」だけではありません。どれだけの負荷を、どの速さで増やし、体が適応する時間を確保できているかです。
そこで役立つのが、ランとウォークを交互に入れる方法です。無理に走り続けなくても、負荷を調整しながら運動を続けやすくなります。
膝が問題にしやすいのは「ランニング」より「負荷のかけすぎ」
2017年にJournal of Orthopaedic & Sports Physical Therapyで発表された大規模なシステマティックレビューでは、11万4千人を超えるデータがまとめられました。膝または股関節の変形性関節症がみられた割合は、市民ランナーで約3.5%、運動習慣の少ない人で10.2%、高い走行量で競技を行うランナーでは13.3%でした。
もちろん、これは「走れば関節が治る」という意味ではありません。ただ、適度な市民ランニングは、よく言われるほど単純に膝を壊す運動ではないことがわかります。
Harvard Healthも同じ方向のデータを紹介しています。675人のマラソンランナーを対象にした研究では、関節炎の割合は一般人口のおよそ半分でした。また24件の研究をまとめた分析では、ランニング直後に膝軟骨が損傷したことを示す証拠は見つかりませんでした。
結論は意外と地味です。1歩走るたびに関節が削られるわけではありません。問題になりやすいのは、その人にとって負荷が大きすぎる、増やすペースが速すぎる、あるいは休みなく繰り返しすぎる場合です。
1歩ごとに脚では何が起きているのか
ランニングには、両足が地面から離れる「空中局面」があります。その後に着地し、足部、下腿、膝、さらに上の筋肉が力を受け止めます。
健康な体にとって、この衝撃そのものがただちに問題になるわけではありません。筋肉、腱、骨などの組織は負荷に適応し、繰り返し受ける刺激に少しずつ強くなっていきます。ただし、その適応には時間が必要です。
昨日まで近所を歩く程度だった人が、今日いきなり5km走れば、やる気だけが体より先に進んでしまいます。そこで膝の痛み、アキレス腱の違和感、足の痛みなど、オーバーロードのサインが出やすくなります。
良いトレーニングは「負荷、負荷、さらに負荷」ではありません。「負荷 → 回復 → 次の負荷」という流れです。
限界になる前に歩く、という考え方
計画的にウォークを挟む方法を広く普及させたのが、アメリカのコーチでオリンピアンでもあるジェフ・ギャロウェイです。考え方はシンプルでした。疲れ切ってから歩くのではなく、その前に歩く。
そうするとウォークは「走れなくなった証拠」ではなく、最初から組み込まれた戦略になります。
この方法は市民マラソンランナーを対象にした研究でも検討されています。走り続けるグループと、ランとウォークを交互に行うグループを比べたところ、フィニッシュタイムはほぼ同程度でした。一方、ラン・ウォーク群ではレース後の筋肉痛や疲労感が少ないと報告されました。
ただし重要な点があります。心臓への負荷を示す指標は大きく低下しませんでした。ウォークを入れれば長距離走が「簡単」になるわけではありません。メリットは、運動を主観的に続けやすくし、筋肉の疲労をゆっくり蓄積させやすいことにあります。
ラン・ウォークならケガを防げる?
ここは慎重に考える必要があります。ウォークブレイクそのものがランニング障害を確実に予防すると言えるほど、直接的な証拠はまだ十分ではありません。
ただ、方法としての理屈は自然です。歩くことで一時的に負荷のかかり方が変わり、働き続けている筋肉に短い休息が入ります。そして、毎回のラン区間をフォームが崩れるほど追い込まずに済みます。
疲労が少なければ、最後の数分を脚を引きずるように終えるより、自然な動きを保ちやすくなります。
それでも最も大切なのは、走行量と強度を少しずつ増やすことです。
危ないのは「今の体がまだ準備できていないトレーニング」
初心者は、体全体が適応する前に「もう走れる」と感じることがあります。心肺機能は比較的早く変化しますが、腱、靱帯、関節にはもう少し時間が必要です。
するとありがちな流れが起きます。1週目は楽しい。2週目には「毎日走れるかも」と思う。そして3週目には「ランニング後 膝 痛い」と検索している。
ランとウォークを交互にすると、このペースを少し落ち着かせられます。運動している時間は確保しながら、最初から最後まで連続して走る必要はありません。初心者が運動時間を少しずつ増やす方法として使いやすいのです。
難しい計算なしでラン・ウォークを始める
正解の比率はひとつではありません。体力、当日の調子、ランニング経験によって変わります。ただ、始めるときの目安はあります。
- まずは「1〜2分ゆっくり走る+1分歩く」など短いサイクルから。
- 限界になってからではなく、最初から歩くタイミングを決めておく。
- スピード、時間、回数を全部一度に増やさない。
- 特に最初の数週間は、回復日を入れる。
- 鋭い痛みや徐々に強くなる痛みは、良いトレーニング刺激ではありません。負荷を下げ、原因を確認しましょう。
体重が多めの人、過去に関節を痛めた人、関節疾患がある人は、ウォークの割合を多くして始めるのも現実的です。必要に応じて医師や理学療法士に相談してください。
まとめ
ランニングは、必ずしも膝の敵ではありません。多くの市民ランナーにとって大切なのは、負荷をゼロにすることではなく、うまく調整することです。
ランとウォークのインターバルは、トレーニングを無理のない区切りに分け、疲労を抑えながら体を少しずつランニングに慣らす助けになります。
そして、地味ですが便利なことがもうひとつあります。時計を何度も確認しなくて済むことです。Ekiroではランとウォークの時間を先に設定しておけば、切り替えのタイミングをアプリが知らせます。見るべきなのは秒数ではなく、自分の体の感覚です。
この記事は一般的な情報提供を目的としており、医療上の助言ではありません。関節痛、過去のケガ、慢性疾患がある場合は、ランニングを始める前に医療専門家へ相談してください。
参考資料
- The Association of Recreational and Competitive Running With Hip and Knee Osteoarthritis: A Systematic Review and Meta-Analysis — Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy (2017)
- Does running cause arthritis? — Harvard Health Publishing
- Does a run/walk strategy decrease cardiac stress during a marathon in non-elite runners? — Journal of Science and Medicine in Sport
- The Galloway Method: How walk breaks can improve your running — The Atlanta Journal-Constitution